債務整理には自己破産、民事再生、任意整理、特定調停とあります。
その中でも借金を免責し、チャラにする事ができる自己破産はもっとも強力な債務整理の方法になります。
今回、自己破産のデメリットとして旅行に行けないなどの行動の制限、選挙権の剥奪、職業の選択の制限、家族への影響があるのか?など、メリットだけではない事をまとめましたので、参考にして頂ければと思います。
自己破産のデメリット 家族への影響は?
まず最初に自己破産の流れを簡単に説明すると、
- 自己破産の申し立て → 破産宣告 →免責許可
となりますが、この手続きの間は本人に一定の制限が課される事になりますが、家族も同様に課されるのか?
と言えば、答えは「NO」です。
例えば、本人の制限として手続き中は、転居できなかったり、職業の制限がされたりしますが、家族の転居や職業の制限などはありません。
ただし、持ち家がある場合に売却する事になったり、車などの資産を売却される事もありますので、その場合は影響を受ける可能性はあります。
その他に考えられる影響として、
- 居住地が変わる場合、子どもの転校も在り得る。
- 職場を変わる可能性がある。
がありますが、周囲の方に自己破産した事を知らされる事はありませんが、持ち家の売却などで噂が立つ、転居する事で生活リズムが変わる事もあったり、家族にも様々な影響が考えられます。
その他に、家族に影響が出る可能性があるのは、「保証人になっている場合」です。
実は、自己破産をしても保証人にまで破産の効果が及ぶわけではありませんので、本人が破産した債権を引き継ぐ事になります。
よって、自分も債務整理や自己破産をしなければ、支払い義務を引き継ぐことになります。
保険を解約する事でのリスクも
また、家族にかけている保険についても、解約する必要がありますので、例えば学資保険の解約となれば将来の学費に影響が出たりする事も考えられます。
また、学費という面で見ると、「奨学金の問題」もあります。
自己破産をすると、保証人になる事が出来ませんので、もし奨学金の保証人が必要な場合に、「子どもの保証人となる事が出来ない」という事は考慮しておく必要があります。
ただし、奨学金自体の名義は本人(子ども)となりますので、他に保証人を立てる事が出来れば、そこまで大きな影響はないかもしれません。
自己破産のデメリット 免責決定するまで行動や職業に制限が??
次に、自己破産をする事でのデメリットについてですが、免責決定するまでの間、一定の行動や身分の制限が行われます。
具体的に挙げると、
- 職業(仕事)の制限
- 転居や旅行の制限
- 自宅や車などの財産を没収
生活必需品以外は処分(換価価値がない、年金は差し押さえ対象外)
などがあります。
自己破産で制限される職業の制限
自己破産の免責が決定するまでの間ですが、
- 弁護士、司法修習生、弁理士、司法書士
- 土地家屋調査士、不動産鑑定士、不動産鑑定士補、公認会計士、公認会計士補
- 税理士、社会保険労務士、行政書士、中小企業診断士
- 通関士、外国法事務弁護士、宅地建物取引主任者、旅行業務取扱管理者
- 公証人、人事院の人事官、国家公安委員会委員、都道府県公安委員会委員
- 国際委員会委員、検察審査員、公正取引委員会の委員長及び委員
- 教育委員会委員、商工会議所会員、商工会の役員、商品取引所会員
- 商品取引所役員、証券外務員、商品投資販売業、商品投資顧問業
- 金融商品取引業、証券金融会社の役員、金融商品会員制法人の会員、信託会社
- 地方公営企業等金融機構役員、沖縄振興開発金融公庫役員、信用金庫等の役員、社会保険審査会委員
- 農水産業共同組合貯金保険機構運営委員会委員、漁船保険組合の組合員、漁業信用基金協会会員
- 船主相互保険組合、日本銀行の役員、政策委員会審議委員
- 土地収用委員及び予備委員、都道府県公害審査会の委員、預金保険機構運営委員会委員
- 投資顧問業、補償コンサルタント、貸金業者、割賦購入あっせん業者、質屋
- 第三者発行型前払式証票の発行者、生命保険募集人及び損害保険代理店
- 一般労働者派遣事業者、労働保険審査会の委員、港湾労働者派遣事業の事業主
- 港湾労働者雇用安定センター、旅行業者、警備員、警備業者
- 警備員指導教育責任者等、不動産鑑定業者、不動産特定共同事業を営もうとする者
- 一般建設業、特定建設業、建築士事務所開設者、建築設備資格者
- 建築審査会の委員、建設工事紛争審査会の委員、測量業者、土地鑑定委員
- 地質調査業者、共同鉱業権者、下水道処理施設維持管理業者、公害等調整委員会委員長及び委員
- 風俗営業を営もうとする者、風俗営業の営業所管理者、風俗環境浄化協会調査員、一般廃棄物処理業者、産業廃棄物処理業者
- 特別管理産業廃棄物処理業者、通関業、鉄道事業、索道事業
- 宇宙開発委員会委員、卸売業者、塩販売人、製造たばこの特定販売業の登録
- 製造たばこの特定販売業者、日本中央競馬会の役員、地方競馬全国協会の役員、調教師、騎手
- 国際観光レストラン、有位者、アルコール普通売捌人、科学技術会議議員
- 原子力委員及び原子力安全委員、宅地建物取引業
については、職業の制限がされます。
また、民法上の制限ですが、
- 代理人
- 後見人
- 後見監督人
- 保佐人
- 補助人
- 遺言執行者
には、免責が決定するまでの間はなる事が出来ません。
免責決定まで早ければ半年程度、遅くとも1年以内となりますので、そのあいだは上記のような制限があると思って下さい。
転居や旅行の制限
全く転居や旅行が認められていないというわけではなく、所在地を離れるには許可を取る事が必要になります。
自己破産をしても、海外旅行をしてはいけない事はありませんし、出入国の際に自己破産の有無について問われる事もありません。
しかし、財産も没収されている現状で、海外旅行を楽しむことは現実的では無いかと思いますので、あまり考えられないのでは無いでしょうか。
財産の没収
車や持ち家など、換価価値が高い資産は没収される可能性がありますが、現金99万円以下と「差押禁止財産」は自由財産となるので没収されません。
・衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具などの生活に欠けないもの
・一ヶ月の生活に必要な食費や燃料
・標準的な世帯の二ヶ月の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
・実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
・仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠けないもの
・債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類
・債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章するもの
・債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
・発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの
・債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供するもの
などが主なものとして挙げられます。
自己破産すると選挙権も剥奪されるの??
上記の通り、免責決定までの間、ある程度の自由や仕事の制限などを受ける可能性がある事が分かりましたが、選挙権まで剥奪される事はあるのか?について、最後にまとめたいと思います。
結論としては、「選挙権は剥奪されない」です。
実はこの疑問は大日本帝国時代の名残だと言われていまして、戦前の日本は自己破産をすると選挙権を剥奪していました。
しかし、現代では自己破産しても選挙権はなくなりませんし、被選挙権もあるので立候補する事も問題ありません。
以上、自己破産には大きなメリットを得られる代わりに、デメリットも多岐に渡りますので、しっかり確認いただき、自分に必要かどうかを検討する方が良いでしょう。
もし、自分自身で手続き、検討する事が難しい場合は、
こちらの記事で、自己破産に強い弁護士や司法書士の探し方、口コミや評判の比較方法についてまとめていますので、参考にして頂ければと思います。